社内公募制度、社内FA制度等は、どのような意味を持つのか

 人事制度には、「社内公募制度」や「社内FA制度」、「社内ベンチャー制度」といったものがある。これらは、いずれも社員の職務(ジョブやポスト)への配置・配属を決定していくうえで、社員自らの意欲・意思を尊重し、積極的・主体的なチャレンジを期待するものである。その意味では、「個人選択型人事制度」の1つの姿として、従来型の「組織選択型人事制度」に対するものであると位置づけることができる。
 ここでは、「個人選択型人事制度」の中でも「自己申告制度」のような挑戦的な意味合いの薄いものとの区別をつけるうえで、これらの制度を「チャレンジ型人事制度」と総称し、その意味するところと背景となる考え方を探っていきたい。

1.「チャレンジ型人事制度」の現状
「チャレンジ型」は個人の意思を反映させる人事制度
 図表1は、「自己申告制度」、「社内公募制度」、「社内FA制度」および「社内ベンチャー制度」における個人の意思の関与度について、従来の「組織選択型人事制度」と比較して表わしたものである。
 従来は多くの企業で「誰をどの職務に就けるか、そこに本人の意思を反映させる余地を持たせずに、組織の論理だけで決定する」という原則論をとってきたと言われている。いわゆる「完全組織選択型」である。これに対して、できるだけ個人の意思に沿った人事をしていこうということから、定期的に社員個々の職務に対する希望や個別の事情を情報収集する「自己申告制度」が生まれてきた。これが、個人に選択の余地を与える第一段階と言える。
 この「個人選択」の余地をさらに大きくする制度として、「社内公募制度」が位置づけられる。これは、新規事業展開やその他の状況に応じ個々の組織に新たな人材ニーズが生まれたときに、それを社員に対してオープンにして、その職務に就くことの希望を社員自身が具体的に意思表明していくという意味で、個人の関与する度合いがかなり高いと言える。
 また、「社内FA制度」は、「社内公募制度」が「求人型」なのに対して「求職型」と呼ばれる人事制度で、組織に人材ニーズが発生している・していないにかかわらず、自分自身の適性や志向に合った仕事先を社内の別の職場に求めていくことを積極的に意思表明し、探っていくものである。その意味では、職務の選択に対する個人の意思の関与度が「社内公募制度」よりもさらに一歩進んだものであると言える。
 「社内ベンチャー制度」になると、自分自身の意思によってビジネスが発生し、当然それに伴って自分自身の役割も含めた組織戦略や人材ニーズを創っていくことになる。そうなってくると、自分自身の人事に対する本人の意思の関与度は、究極の姿になるとも言えそうである。
図表1 人事制度と個人の意思の関与度
組織選択型人事制度
(従来型)
自己申告制度 社内公募制度 社内FA制度 社内ベンチャー制度

大規模企業で「チャンレジ型」が伸展

 図表2-12-2に「社内公募制度」および「社内FA制度」の導入状況についての比較的最近の調査結果を掲げた。ここでは、「社内公募制度」の導入が30.4%、「社内FA制度」の導入が5.6%と、両者の間で大きな差が見られる。ただし、両制度とも「導入を予定・検討」の回答率が高く(24.8%と43.2%)、今後ますます導入する企業が多くなっていきそうな状況が予想される。
 また、図表3は図表2と調査の出典は違うが、同じく「社内公募制度」の導入状況を企業規模別に表わしたものである。ここでは、この制度が従業員規模の大きい企業ほど多く導入されていることがわかる。その他、「社内FA制度」等について同様の資料はないが、全体の導入率が低いことから考えると、やはり大規模企業に限られた人事制度であることが予想される。
 「チャレンジ型人事制度」が大規模企業で注目度が高いことの理由は明確である。規模の小さい企業では、組織が人材を選択する場合においても、個人が職務を選択する場合においても、選択肢の幅が狭いため、「チャレンジ型」にすることのメリットが少ないのである。また、組織戦略を構築していくうえで、社員個々の力量の影響度がもともと高く、従来から職務の選択に対する個人の関与度が高いことも予想できる。
 つまり、この「チャレンジ型人事制度」の導入は、まさに現在の大規模企業の抱える問題そのものを反映しているとも言えるであろう。

図表2-1 社内公募制度の導入状況
資料出所:社会経済生産性本部「第6回 日本的人事制度の変容に関する調査」(2002年10月調査)
図表2-2 社内FA制度の導入状況
資料出所:図表2-1に同じ
図表3 規模別にみた「社内人材公募制度」の実施状況
企業規模 実施している企業
(%)
実施していない企業 無回答

(%)
3年以内に実施の予定が
ある(%)
検討中である
(%)
今後の予定がない(%)
規模計 3.4 90.6 0.5 10.5 79.5 6.0
5,000人以上 57.7 40.0 1.2 10.4 28.4 2.3
1,000〜4,999人 29.5 67.4 2.6 15.1 19.6 3.1
300〜999人 10.6 86.3 0.6 15.3 70.4 3.1
100〜299人 3.6 91.3 0.6 12.8 77.9 5.1
30〜99人 1.7 91.7 0.5 9.2 82.0 6.6
資料出所:厚生労働省「雇用管理調査」(2002年)
(注)「社内人材公募制度」とは、ある特定のプロジェクト・事業のための要員や一般に欠員が生じた場合の補充の募集源を社内の自由公募に求め、通常本人の上司を経由しないで応募することができる制度をいう。

NEXT