仕事の目的を認識して営業活動を行う
「あなたの仕事はどういう仕事ですか?」と営業マンであるあなたに質問したとしたら、あなたは何と答えますか?
もし、あなたが「私の仕事は、毎日お客様のところに行って商品を紹介し、うまくいけば受注をして、商品の配送の手続きをして…。そういう仕事です」という答えだったとしたら、私としては、「『営業マン』として『いい仕事』をしていく道のりは遠いな」という印象です。
 確かに営業マンの具体的な活動内容をみてみれば、顧客を訪問して商品を説明し、商談を行うでしょう。でも、それは仕事そのものではなく、仕事をする上での「手段」でしかありません。そこに、「何のために、この活動をしているのか」という理解がない限り、スキルアップを図っていく方向・基準を明確にしていくことはできず、本当の意味の「いい仕事」につなげていくことは難しいのです。
 つまり、「どういう目的で顧客訪問するのか」「私が説明することは、どんな意味を持つのか」、営業活動の目的・意味をひとつひとつ理解するところに、営業マンとしてのスキルアップの第一歩があるのです。
営業の目的はお客様の満足に貢献すること
 それでは、営業の仕事の究極の「目的」とは何でしょうか。
「営業の仕事は、とにかくお客様に商品を売って稼いでくるのが目的です」という答えはどうでしょう。これは、確かに営業という仕事の目的の一つであると言えます。けれども、営業の目的は本当に「売る」ことなのでしょうか。私は、それだけでは営業マンとして視点が低いと言わざるを得ないと考えます。
 ちょっと顧客の立場に立ってみましょう。顧客はなぜ商品を買うのかと言えば、その商品を通じて自分が抱えている課題の解決を図ったり、欲求を満足させたりするために買うわけです。とすれば、営業という仕事の目的は、「お客様が商品を通して満足することに貢献することである」ということができるのではないでしょうか。
それに、「売る」ことだけを目的にしてしまうと、どうしても短期的な業績にとらわれがちになってしまいます。もし目先の利益にはしって商品を売ってしまった結果、顧客から「あそこからはもう二度と買いたくない」と思われてしまったら、そこで関係は断たれてしまうわけです。その意味からも、営業マンには単に商品を「売った」「買った」というだけではなく、その先の顧客の満足までも視野に入れ、信頼関係を強化していくような長期的な視点を持った仕事の仕方をしていってほしいと思います。
営業マンの役割は、顧客を課題解決に導くこと
 「お客様の満足に貢献する」方法を考えると、商品を通じて貢献することと、営業マンとしての役割を通じて貢献することの二つが挙げられます。その商品の性能が顧客のニーズにマッチすれば、商品そのもので顧客に対して貢献することができますね。だとすれば、営業マンは、商品以外の部分で顧客に貢献していくこと、例えば、お客様が困っている原因はどこにあるのだろうか、どんな商品が解決に役立つのだろうか、それはどういうふうに使っていけばいいのだろうか、そういったことを明確にし提供していくことで顧客の満足に貢献していくことが役割になるでしょう。
 特に、広告やインターネットが発達した現在、単に商品を説明したり売ったりするだけであれば、営業マンは必要ありません。広告を見て「これが欲しい」と思った人は、パソコンから直接その商品を売っている企業なり店なりにアクセスして、購入すればいいわけですから。その点からも、単なる商品説明や商談は、もう営業マンの役割ではなくなっていると言ってもいいかもしれません。

 私の事務所には、OA関係すべてについて相談に乗っていただいている、ある事務機販売会社の営業マンがいます。私は彼を非常に優秀な営業マンだと感じているのですが、それは、彼が自分が売る商品を通じて私たちの課題に対してどういう貢献ができるかをちゃんと理解していて、こういう解決方法がありますよということを的確に示してくれるからなのです。ですから、こちらとしては彼なら何かしらのアイデアを提供してくれるだろうという期待をいつも持っているので、ちょっとしたことでもすぐに相談してみようという気になる。
 「こういうことはできないか、ああいうことはできないか」という時、顧客側は商品そのものをイメージしているとは限りません。営業マンに相談をすると、漠然としていたこちらのニーズを整理してくれて、それならこの商品だという提示をしてくれて、さらにその商品を使ってこちらが課題を解決するところまで導いてくれる。そこにこそ営業マンの存在価値があるのだと思います。「ある商品を買いたかったらこの人に」ということではなく、「あることについて相談したければこの人に」というイメージ。できれば、その「あること」の領域が広ければ広いほど、深ければ深いほどいいわけです。
深い専門知識・コミュニケーション能力の開発が重要
 以上のような「役割」から考えると、営業マンが行うべき「スキルアップ」のポイントはおのずと明確になってきます。
まずは、課題解決を図っていくだけの「専門性の高さ」が必要です。これは、通り一遍の商品知識を持っているだけではだめで、専門家としてその商品の現場での使われ方やその商品を取り巻く状況などの深い知識を持っていることが求められます。そして、そのことによって、顧客からの問いかけにどれだけ応えることができるかが重要です。もちろん、全てについてその場で答えることができなければならないということではありません。どこに問い合わせれば課題解決に導くことができるかといった知識を持っていることでも、営業マンに寄せる信頼感は大きく変わってくるものです。
 また、「コミュニケーション能力」も欠かせないポイントでしょう。相手の話を聞き出せなければ課題を見つけようがありませんし、たとえ深い専門知識を持っていたとしても、それを伝える手段を有していなければ、課題解決につなげていくことはできません。「役立ちます」ということを顧客に伝えていくことができなければ、意味がないのです。


 「営業マン」に求められるスキルは、確実に変化・高度化しています。「きちんと訪問していれば受注できる」「とにかく商品を売り込めばいい」という時代ではありません。
 まずは、「お客様の満足に貢献する」という営業の目的、営業マンとしての自分の役割をしっかりと理解・認識してください。そして、その理解・認識の上で、充分な専門知識とコミュニケーション能力を高めていく日々の努力をぜひ期待したいところです。
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