(9)65歳前で退職し、失業した場合の老齢厚生年金
雇用保険から支給される「基本手当」と60歳台前半の老齢厚生年金とは、同時に受給することができません。従って、65歳前で離職し、雇用保険から「基本手当」を受給すると、その間、特別支給の老齢厚生年金の給付は受けられなくなります。
基本手当とは?
原則として、離職日以前1年間に被保険者期間が通算6ヵ月以上あり、労働の意思及び能力を有しているにもかかわらず、職業に就くことができない状態にある場合に支給されます。

(給付日数 60歳以上65歳未満)
・一般の受給資格者の場合(自己都合退職や定年退職)
算定基礎
期間
1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
給付日数 90日 120日 150日
・特定受給資格者の場合(倒産や解雇による退職)
算定基礎
期間
1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
給付日数 90日 150 180 210日 240日
算定基礎期間 ・・・原則として、受給資格者が基準日(離職の日)まで引き続いて同一の事業主に被保険者として雇用されていた期間
受 給 期 間 ・・・原則として基準日(離職の日)の翌日から起算して1年

(基本手当受給の手続き)


基本手当との調整方法
@老齢厚生年金の支給停止
求職の申込みがあった月の翌月から、次のいずれかに該当する月までの各月において、老齢厚生年金の支給が停止されます。
 ・基本手当を受ける期間が経過したとき
 ・所定給付日数の受給を終了したとき
この期間であっても、基本手当を受けた日及びこれに準ずる日が1日もない月があったときは、その月については老齢厚生年金は支給されます。
待期期間、離職理由による給付制限期間は、基本手当を受けた日に準ずる日として、老齢厚生年金は支給停止となります。
A事後精算
基本手当を受ける期間が経過するか、所定給付日数の受給を終了した時点で、基本手当の支給対象となった日数を総計し、支給停止されていた老齢厚生年金の月数との調整を行います。

 *(基本手当の支給対象となった日数÷30)に1未満の端数が生じた場合は、1に切り上げます。
支給停止解除月数が1以上である場合には、その数分の支給停止が解除されます。
<具体例>
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
基本手当支給対象 28日 26日 26日 24日 24日 20日 20日 10日
年金 支給 停止 停止 停止 停止 停止 停止 停止 支給
                 ▲求職の申込み                                ▲受給期間満了
基本手当の支給対象となった日数  178日
支給停止月数               7ヵ月


7ヵ月-178日/30=7-5.933≒7-6=1
従って、1ヵ月分の支給停止が解除されることになります。

手続き上の留意点
65歳以前に退職した場合には、まずハローワークで「求職の申込み」をし、「基本手当受給」の手続きを行います。「受給資格者証」の交付を受けた後に、ねんきん事務所で老齢厚生年金の受給手続きを行います。
「受給資格者証」には、「基本手当日額」が記載されていますので、その額と年金額を比較して、どちらを受給するかを決めます。もし厚生年金の受給を希望するのであれば、「失業認定」は行わないようにします。そうすれば、「基本手当」は支給されず、年金は支給停止されません。
ただし、退職後、再就職を希望している場合は注意を要します。雇用保険から支給される「再就職手当」や(8)で説明した「高年齢再就職給付金」を受けるためには、「基本手当」を受給していなければならないからです。

次ページでは、老齢年金の繰下げの仕組みについて説明します。
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